うずまきナルトは犬を飼いたい

 

 幼なじみのサスケの家は犬を飼っている。「シロ」という名前の別に白くはない柴犬だ。サスケが飼いたいと強請ったらしいが、結局しつけのほとんどをしたのは兄のイタチだった。

 イタチはしつけが上手い。だからナルトが犬を飼うときは、イタチにしつけの仕方を教わろうと思っている。はじめからしつけを完璧にしておけば、両親だって反対しないだろう。イタチには小さい頃からいろいろと世話を焼いてもらっている。サスケと一緒に遊んでもらったり、修行をつけてもらったり。一人っ子のナルトを実の弟のように接してくれる。……とはいえ正真正銘の弟である、サスケへと注がれている彼の愛情には全く敵わないことは明らかなのだけれども。ともかく、今日だってナルトはイタチと約束しているのだ。

 毎日通っているうちは一族の居住区に、今日もナルトは駆けていく。家紋の暖簾の揺れる大きな門をくぐる。サスケの家の玄関の前ではイタチが箒を手に掃除しながら待っていた。

「イタチの兄ちゃん、待たせちまった?」

「やあ、ナルトくん。ちょっと手伝いを頼まれてしまったから済ませてただけだ。大丈夫、さ、中にどうぞ」

 イタチは実に優秀な忍だ。うちは一族始まって以来の天才と言われ、今も火影直属部隊である暗部に所属し、一族と里の架け橋として重要な役割を担っている、というのはミナトからもサスケからも散々聞かされた話だ。しかし今は平和な世の中である。任務のない日も多く、その時はこうして警務部隊で働く両親にかわって家事をしている。

 引き戸を開けて中に入っていくナルトとイタチを追いかけるように豆柴のシロがどこからか駆け寄ってくる。シロはよくしつけられている。放し飼いされているが敷地内からも出ず、散歩や食事の時間には必ず玄関先で待っている。サスケとは大違いだとナルトは思う。サスケは朝が弱くて、ナルトが迎えに行ってやらないといけないくらいだ。従順なシロは玄関の中には入ってこない。おすわりをして、主がまた外へ出てきてくれる時をずっと待っている。その小さな黒い瞳が無垢に輝いているのを尻目に、引き戸は音を立てて閉じていった。

 階段を上がるとサスケの部屋がある。遠慮なくイタチは中に入っていくのにナルトも倣う。もうこの広い家の間取りもすっかり覚えてしまえるほど幾度となく訪れた。

「ふっ……ふぅっ……」

 荒い呼吸音。まるで犬が舌を出して息をしているときのようだ。未だアカデミーを卒業したばかりの少年がひとりで寝るには広すぎるようなベッドの上に、犬が一匹、臥せっている。毛の色は艶の良い黒だが、シーツに溶け込んでしまいそうなほど体色は白い。跳ねた黒髪がくったりとベッドに散らばる隙間、項のあたりに赤い首輪が巻かれている。それはシロほどしつけができていないからだ。シーツをくしゃくしゃになるまで掴んで、唇の端から涎を垂らして、しかし尻は高く突き出されて、主人の帰りを喜ぶようにそこから生えたしっぽが揺れている。

「サスケ」

 兄に名を呼ばれて、ベッドの上の犬はうっすらと目を開く。涙の張った黒い瞳がイタチと一緒にナルトを見る。

 犬の名前はうちはサスケ。

 イタチの弟で、ナルトの幼なじみで、ナルトがこれから飼おうと思っている犬こそが彼であった。

「……イイコにしてたか? サスケェ」

 外では強気で生意気な黒い瞳が今にも泣き出しそうに潤んでいるのにナルトの嗜虐心が刺激される。サスケが何かを言う前に、ギシと音を立ててベッドが軋む。イタチがその上に乗り上げたのだ。サスケの伏せられた身体を後ろから抱きすくめる。シーツから指をほどかれて、震えるサスケの身体は起こされた。

「ちゃんと言いつけ通り『待て』ができたな、サスケ。いい子だ」

 しつけに重要なのはアメとムチだとイタチは言っていた。いいつけが守れれば褒美を、守れなければ罰を。上下関係をきっちりと教えこむのが重要なのだ、と。

 イタチがサスケの耳元で囁いて、唇で柔らかな耳たぶを食んでやっている。そのまま頬に、唇にキスをされれば、サスケの表情はどんどん蕩けていく。既にたっぷりとイタチにしつけられたサスケは彼から与えられる褒美のくちづけが大好物だ。

「あ、あ……っ、にい、さん」

 甘い声が小さな唇から出ていく。イタチが掴むサスケの手首にはいつもの白いアームカバーだけが残されていて、裸に首輪という異様な格好の中ではそれだけが日常のようであまりにもミスマッチだ。イタチがいつもそうさせているので、なかなかマニアックな趣味をしているとナルトも思うのだけれども、しかし妙に可愛らしいその姿に興奮してしまうのも違いない。

「これも抜かないで我慢できたな」

「あっ、うあっ、あっ、にぃ、さっ、やだ、うごかさ、ないで」

 ぐにぐにとイタチが弄るのは、犬のしっぽを模したアナルプラグだ。膝立ちの姿勢になっているサスケの尻の間に挿入されたそれを前後に動かして具合を確かめている。するとサスケの腰がびくびくと揺れて、しっぽがまるで喜んでいるように動くというわけだ。とはいえ掴んで動かしてやらなくても、サスケは挿入の圧迫感だけで腰を揺らしてしまっていたのだけれども。

 悶えるサスケを腕の中に抱えたまま、イタチはナルトに目をやり手招きする。白い肌が赤く色づいていく様から目が離せないままベッドの上に乗る。イタチが大きく開かせたサスケの脚の間にナルトは収まると、普段のすました表情など完全に溶かされて消えてしまった幼なじみを見下ろす格好になった。イタチの手が尻から離れ、それはサスケのすっかり勃起したピンク色の性器と乳首を転がし始める。イタチと目配せをしてナルトはアナルプラグをぐいと引き抜く。

「あっ!」

 潤滑油でどろどろに塗れた栓と同時に、喉からは高い声が引き出される。少年の身体にはいささか太すぎる栓を咥えていたそこは、真っ赤に熟れて柔らかい。そっと指で押してやれば、ナルトの指など簡単に飲み込んでしまう。すでにとろとろに解されたそこは挿入されたナルトの指に愛しそうに絡みつく。

「ふぅ……ん、んぁ……っ、や、めろぉ……」

 ナルトに対しては未だ抵抗の意志を示すようにサスケが目を細めてくる。しかしイタチの指技に翻弄され喘ぎながらでは鋭さは足りず、むしろ潤んだ黒い瞳がたまらない。普段やたらとナルトにつっかかってくるサスケだからこそ征服欲を煽られる。これでもし、イタチの協力によるものではなく、ナルト一人でサスケをここまで乱すことができたなら。そんな未来を想像してナルトはごくりと生唾を飲み込んだ。

「にいさん、もう」

 しかし現実はなかなか厳しい。懇願するようにサスケが呼ぶのはイタチの名前だ。真っ赤に腫らした乳首がイタチの指先で転がっていたが、すっとその指は離れていく。性器を握っていた手も退けられて、イタチはただサスケの身体を後ろから支えてやっているだけになる。失われた愛撫に焦らされてぴくぴくと震え、乞うような視線をイタチに送るサスケだが、彼の兄は呆れたように笑って言った。

「頼むなら、ナルトくんに。だろう?」

 兄の視線に導かれてサスケの黒い瞳がナルトを正面から写す。どきりとして思わず中をいじくる指の動きを止めてしまう。サスケが悔しそうにこちらを睨んでいる。眦に涙が浮かんでいる。きゅうとナルトの指が先を促すように締め付けられたのは、サスケの「おねだり」なのだろうか、それとも。

「要求にただ答えてやるだけでは、こちらが上、ということを教えることにはならない。例え腹を見せていたとしてもだ」

 指を動かしてやろうとしたナルトを制したのはイタチだ。やはり彼はサスケに何も与えないまま、ただ弟の頬にかかる髪を愛しそうに梳いている。たったそれだけのことでもサスケの身体は敏感に反応して肌の朱みを増している。

「きちんとこちら側の要求を飲ませてから、褒美を与える……それで初めて、上下関係を認識するんだ」

「……だってよ、サスケ」

 突っ込んだ指はそのままに、ナルトはサスケを見下ろした。汗の滲んだ白い肌が上気して、熟れた果物みたいに真っ赤な乳首とピンク色になって勃起した性器がその中でも一層鮮やかで。

「どうして欲しいのか、オレにおねだりしてみれば、ちゃぁんと気持よくしてやるってばよ?」

 つい意地悪くしてしまうが、思わず口の端が持ち上がってしまうほどナルトも興奮しているのは事実だ。きゅうきゅうと恋しそうに締め付ける内側が、サスケの我慢の限界を物語っている。いくら外面は強がっていても、中は欲望に従順すぎる。

「だれ、が、お前……なんか、にっ!」

 びくんとサスケの身体が跳ねる。イタチが耳たぶを食みはじめた。鮮明な刺激は与えずに、少し的の外れた場所をわざと曖昧に撫でている。全身を敏感にさせたサスケの熱を加速させるのはそれでも十分だったろう。ナルトも真似するようにサスケの身体に覆いかぶさり、鎖骨に軽く噛み付いてやった。真っ赤な首輪が目に入る。猫にするみたいに鈴でもつけてやったら可愛いかもしれない。気まぐれな猫をしつけるのは犬よりも難しいらしいけれど。

「ひっ、い……っ!」

「言わねぇんだったら、ナシってことで」

 ベッドの上に空いている方の手を這わせる。掴みあげたのはしっぽのついたアナルプラグだ。サスケの目の前に翳してやればびくりと肩を震わせる。強気なようでいて存外サスケは臆病だ。もう一度それをはめられて放置される未来を思い描いて怯えている。

「サスケ、ほら」

 イタチが耳元で囁くと諦めたようにサスケの瞼が伏せられる。黒い睫毛が影をつくる様は間近で見ると本当に綺麗だ。結局イタチがサスケを動かすのには、いささか不満はあったけれど、ナルト自身の力不足だというところは認めなければならない。イタチは協力してくれているのだ。ナルトがいずれ自分の力でサスケを飼うことができるように。少しずつでもナルトはイタチの手腕を吸収していかなければならない。現に、ナルトの言うことに逆らってばかりだったサスケはこれでも随分大人しくなったほうなのだ。初めてのときはそれこそ噛み付いてきたり引っ掻いてきたりと大変だった。

「さーすーけ?」

 だからあくまでこれも自分の命令なのだと主張するようにナルトは名前を呼ぶ。呼ばれたサスケはゆっくりとナルトに目を合わせる。手にきゅっと力が入って掴んだシーツの皺が深くなる。

「……はやく……っお前の、挿れて、イかせて、くれっ……ウスラトンカチっ……」

 相変わらずの口の悪さだけれども、サスケは間違いなくナルトに対して懇願した。

 これなら合格点を与えてもいいだろう。イタチに目配せすると、彼はサスケの両足を持ち上げて頷いた。イタチからもオーケーが出たのだ、何も遠慮することはない。

 性に目覚め始めたばかりのナルトの性器は目の前の痴態にもうすっかり勃起していて苦しいくらいだった。存分に柔らかくなってほぐれたそこに、固くなったそれをあてがい、押しこむ。

「ひゃぁっ」

 高い声は喜びの証だ。ナルトがサスケの内側に入りその熱と締め付けで齎される快感と同じかそれ以上に、サスケは中を突かれる際のそれを待ちわびていたのだ。サスケの腰を掴んで、ナルトはまるで獣同士がそうするようにがっついた。犬の間でも、上下関係を教えこむためにマウントをとり、腰を振ることがあるらしい。何もおかしなことはない。サスケはイタチの腕に抱かれながらナルトにゆさゆさと揺さぶられている。

「あっ、んぅ、ひっ、あぁっ、ああっ!」

「サスケっ、サスケェ……っ、すげ……、きもち、いいっ……」

 すっかり蕩けたサスケの眼差しに見とれながらナルトの頭も快感にとかされていく。本当はもっと理性的にならなければ、しつけをする側としては失格なのだろうが、未だ若いナルトには少々難題だ。思い切り身体を近づけて、真っ赤に色づいた唇にキスをする。今のナルトが届く一番深いところまで挿入され、抉るように腰を動かせば、サスケの内側がきゅうきゅうと締まった。

「あ、ああっ、でる、で、るぅ」

「イく、だろ? サスケ」

 言い直して、とイタチが囁く。サスケは大人しくそれに従う。

「イく、イく、にいさ、なるとぉっ」

 名前を呼ばれてゾクリと背筋に駆け上がる欲望。ああ、来る。そうナルトが思った瞬間には下腹から搾り出すように熱が震えて、身体の外、つまりはサスケの中にそれは注がれていく。散々に焦らされたサスケの性器からも、精液は待ちわびたかのように放たれた。

「はっ、ああ……」

 呆けてとろけた顔をしたサスケの頭を撫でてやる。よく出来たと褒めるように。意識のはっきりしないサスケは愛されるのが好きなのか、うっとりと掌から与えられるやわらかな刺激を甘受している。そのまま肌を撫でたり、くちづけをあちこちに落としてもすっかりとおとなしく従順になっている。この僅かな時間は、サスケはもうすっかりナルトに腹を見せているのだ。

 

 

 今朝もまたナルトはサスケの家に行く。任務前にサスケを迎えに行くのはすっかり日課になっている。まるで朝起きて、飼っている犬の散歩に出かけるかのように。同じく日課なのだろう、玄関先でイタチが掃き掃除をしているのもいつものことだ。

「サスケってば、起きてる?」

「こんな時間まで寝てるわけがないだろ、ドベのてめぇじゃねぇんだから」

 玄関の扉が開いて中から現れたのは青の半袖に白い半ズボンを履いたサスケだ。額にはナルトと同じ木ノ葉印の額当て。大きく立てられた襟の隙間から覗く首に、今は首輪は巻かれていない。尻からしっぽも生えていない。

「オレってばお前を迎えに行く時間に遅刻したことねぇけど?」

「フン」

 誤魔化すように鼻を鳴らしたサスケだが、つい先日までナルトが迎えに行かなければ遅刻ギリギリだったのだ。懸命に取り繕っても、イタチが証人になっているのだから誤魔化せない。現にイタチも二人のやりとりを聞いて苦笑している。

「行くぞ、ウスラトンカチ」

「折角迎えに来てやってるのにそういう言い方はねぇだろ!」

 走るサスケをナルトは追いかける。その後ろについてくるのは、サスケの飼っている犬のシロだ。シロは足が早いから、すぐにサスケも追い抜いていく。これが彼の朝の散歩の代わりなのだ。

 ナルトもサスケに追いついて、任務の集合場所目指して走っていく。

 首輪もリードもつけなくても、勝手にどこかへ行ってしまうこともないくらい犬はしっかりしつけられているのだ。

 これならもうすぐにでも、家で飼いたいといっても両親は許してくれるのではないだろうか。口では反抗しながらも、ナルトの迎えを拒絶することなく、隣を走るサスケの横顔にナルトはニシシと歯を見せて笑った。

 ポケットの中でチリンと音がして、ナルトはそういえば、とその音の原因を手で掴んだ。ここに来る前に露店で小さな鈴を買ってきたのだ。もちろんサスケにプレゼントするために。彼は気に入ってくれるだろうか。頭を振るたびにチリンチリンとサスケの首元で可愛らしい音を立てる金色の鈴を想像して、益々ナルトは上機嫌だ。

2015.11.03

いつまでやってんだよなアニオリ無限月読のしつけ発言に衝撃を受けた結果です。アニメとかなり性格違いますけど!笑 兄さんがあまりにもナルサス過激派すぎる最近の公式二次事情。

Text by hitotonoya.2015
inserted by FC2 system