サウザンド・テンプテーション 2

 

 ぼんやりと霞む意識の中で、それでもナッシュは懸命に自分を保とうと気を奮い起こしていた。

 湿り気のある触手が四肢を拘束し、少しでも抵抗を見せれば首に巻き付いた太い触手が喉を圧迫し苦しめてくる。意識を失えば何をされるか分かったものじゃない。一度ここで目覚めた後、ベクターによって変えられてしまったメラグとドルベの快楽責めに屈してナッシュは意識を失った。そうして再び目覚めたとき、どれだけの絶望がナッシュを襲っただろうか。

「うっ……、んぅ、はぁ……ん」

 熱っぽくこぼれる吐息と声が、まさか自分のものだとはナッシュは認めたくなかった。仰向けに寝かされた、もう殆ど全裸に近い身体。両脇からナッシュを抱くように愛撫を施すメラグとドルベ。その手のひらの中で揉みしだかれている肉の固まりが自分の胸についているだなんて、もっと認めたくなかった。

「うぅ……っ」

 まじまじと見れば眦にじんわりと涙が滲んでくる。

「ふふっ、ナッシュのおっぱい、少しは大きくなったかな?」

 ぎゅ、ぎゅ、と右胸を揉みながら、メラグは時折ピンク色の乳輪に舌を這わせて焦らすように弄ぶ。

「このままでも十分、かわいいよナッシュ。やわらかくて形もきれいに出来たね」

 そんなふうに褒めながら、彼自身はナッシュのものよりずっと大きな溢れんばかりの乳房を左側から押しつけてくるのはドルベだ。左の乳房を揉みしだきながら、こちらは乳首を引っかいたり食んだり直接的な刺激を与えてくる。

 少年として成長していたはずのナッシュの身体は、今やどこから見ても少女のそれに変貌させられていた。両胸で控えめにだが、間違いなく大きくなり、たぷりと脂肪を感じさせる乳房こそ最も顕著な変化だが、体つきも全体的に細く曲線を描くようになり、それでいて太股や尻の肉付きはむちむちと張ってよくなってきている。触手に埋もれた下半身から飛び出るように勃起したペニスだけが最早男性の名残であり、全身を見れば異質な存在と化している。そのペニスさえも、触手から飛び出た針のようなものがあちこちに突き刺されていて、最早内側がどうなっているのか、元の機能を維持しているかも分からない。

「うあぁ……あつい、あつい……」

 うわごとのようにナッシュは苦悶を訴えるが、快楽に溺れたメラグとドルベは意に介さず愛撫を続けているだけだ。臍に繋がった触手がどくりどくりと脈打って身体の内側に膨大な熱を送り届けていく。ここ最近はとにかくそれが顕著にナッシュを苦しめた。メラグやドルベに、そして無数の触手たちに。性感帯へと変えられ敏感になった箇所をさすられる度にじくん、じくん、と心臓がもうひとつ腹の中に出来たかのように疼く。

「メラグ……ドルベ……も、こんなこと、やめ……」

「だめだって言ってるだろう?」

「ナッシュに本当の快楽を知ってもらうまでね」

 己の身体の変化にそれでも耐えられたのは、メラグとドルベを救わなければならないという気持ち、ただそれだけだった。どれだけ媚薬のたっぷり籠もった体液を浴びるように注がれて、身体を好き勝手にいじくりまわされても、いつか彼らと一緒にこの悪夢から逃げ出さなければならない。その使命感がナッシュの自我を保たせていた。

「マシュマロみたいにやわらかくてかわいらしくて……甘いおっぱい……」

 うっとりと味わわれながら愛撫を続けられると、ナッシュの腰がもの欲しそうに揺れていく。

「あつい……、あつい……っ、あついっ」

 きゅうきゅうと腹の中を締め付けるような熱にナッシュは悲鳴を上げた。ナッシュが感じていると思ったのだろう、ドルベもメラグも同時に、イかせようという意志をもってナッシュの乳首をきゅうと強く捻りあげる。ナッシュは目を見開いた。灼熱の波が下腹部に押し寄せる。何かが「来る」ような、意識がまるごと持って行かれてしまいそうな、そんな絶対的な感覚。

「―――――――――――っ!!」

 声にならない悲鳴を上げて、ナッシュの肢体はびくんと跳ねた。背を、喉を反らして悶えるのは「イく」ときのそれと同じ動き。パンパンに張りつめた水風船が勢い良く割れて中身が飛び出したような感覚と脱力感を味わって、ナッシュはうつろに宙を見る。また射精させられてしまったのだろうか。そう思って勃起したペニスを確認するが……そこは張りつめたまま先走りをだらだらと流しているだけで、精液を垂らしてはいなかった。

「ふぇ……?」

 ナッシュは混乱する。もう精液がないわけではない。改造された陰嚢では精液が絶えることないようにされている。だが射精していないとするならば、今しがた感じた何かが溢れ出るような、射精感のようなものはいったい何だったのか。身体から漏れ出たのは何だったのか。この身体中の倦怠感は一体。

 熱くて熱くてたまらなかった下腹部は未だきゅんきゅんと切なげに疼いている。だけれどもあの耐え難い熱は収まり、ナッシュを苦しめていた腹の内側の違和感も嘘のように消えた。何かが、そう、与えられていた圧倒的なまでの熱がすっかりと自分の一部になって、胎の中にすっぽりとおさまって定着したような、そんな感覚。

 ナッシュが己の腹に意識を向けていると、吸いついて離れなかった、臍の触手が死んだようにぼとりと床に落ちた。ぐいと顔を持ち上げて触手が噛みついていた場所を確認する。普段と変わらぬままの、くぼんだ臍がそこにはあるだけだった。ドルベとメラグもそれに気づいたのか、ナッシュの腹を見て目を合わせる。

「あ、あ……?」

 臍の触手が切っ掛けになったように、ナッシュの身体中に巻き付いていた触手が、首を絞めているものを除いてしゅるしゅると解けていった。ナッシュは驚くが、これは絶好のチャンスであると認識する。四肢が自由なうちに逃げ出さなければならない。メラグとドルベを助けて、一緒に……。

 そう考えて両手足に力を入れるが、射精のような何かのせいか、身体じゅうが鉛のように重く、指先をぴくりと動かすだけで精一杯だった。

「くそっ……」

 舌打ちする間もなく、メラグのきれいな指がそっとやわらかな肉のついた下腹部を撫であげる。しばらく触手に犯されるばかりだった箇所に彼女の指先が触れると、まるで内臓にまでその熱が伝わるかのようだった。

「あんっ」

「できたのね、ナッシュ」

 実にうれしそうに甘い声を出すメラグに、ナッシュは恐怖さえ覚えた。

「なに、が」

 本当はなんとなくだが理解していた。

 ずくんずくんと疼く下腹部と、常に勃起するようになったペニス。その直下に吸いついて、根を張り、脈打つドン・サウザンドの紋章。メラグがそこに女性器をつくるのだと言って施したもの。紋章の貼られたその下が切なくてたまらなくて、そこからどろどろと何かが溢れだしていることを自覚しながら、ナッシュは気づかぬフリをし続ける。

「子宮」

 メラグの短い答えは死刑宣告のようだった。女にはあって男にはない臓器が、ナッシュの身体の内側で生成を完了したというのだ。

「淫魔としての身体が完成するのよ」

「よくがんばったね、ナッシュ。さあ、今日で最後の仕上げだ。もう少しで私たちと同じ快楽を、君も得られる身体になる……」

 ドルベもまた、いとおしそうにナッシュの臍を円を描くように撫でた。筋肉のない、つややかで白い肌。改造されたメラグとドルベの身体と同じようなものが、ナッシュの魂を形作る器になっているのだ。

 

 

「ナッシュ、すごく似合っているよ」

「んっ、ふぅ……っ」

 するりと腰のくびれを撫でられながら、仕上げとばかりにドルベに耳元で囁かれれば背筋が粟立ち腰が抜けてしまいそうになる。

「かわいい花嫁さん……。ほら、自分でも見てみて。これが今のあなたのカラダ」

 大きな鏡を用意して、メラグがナッシュをそちらに向かせる。見たくなくて顔を逸らそうとしたが、首に巻き付いたまま離れなかった黒い触手が締め付けを強め、息ができなくなったところをぐいとメラグに方向転換させられる。そうして真正面から向き合わされた全身鏡。鏡の中にいたのはウェディングドレスのような純白のドレスを身につけた、少女……ともいえない何かだった。

 鏡で目の当たりにさせられたナッシュの身体は本当にすっかり変えられてしまっていた。

 シルエットが曲線を描いて丸みを帯びた、どこからどう見ても女の体つき。なのに勃起のおさまらないペニスが極端に短いスカートの布を押し上げて真っ赤に熟れた先端をのぞかせている。その有り様は自分の身体のはずなのにグロテスクにさえ思える。少女のように膨らんだ胸は申し訳程度に布が覆ってはいるが、ぷっくりと立ち上がったピンク色の乳首が形を鮮明に浮き上がらせて、色さえ透けて判断できるほどだ。ミニスカートの中、ペニスの下の股間では、どこから漏れているのかわからない透明な液体が溢れ、肉付きの良くなった太股を包むオーバーニーソックスを湿らせていく。

 ドレスの生地はなめらかだったが、妙な光沢をもっている。そのうえ少しサイズが小さく、ナッシュの変わりたての身体をきゅうと締めつけ、敏感な箇所には食い込んでくる。身につけているだけで息が上がってしまうような、淫猥なドレス。抵抗を封じるために首を絞めるものと、両手首をまるでブーケでも持つように腹の前でまとめ、黒光りする触手もそのいやらしさに拍車をかけている。

「これが……俺……?」

「そうよ、ナッシュ」

「うそ、だ」

 悪い夢にしか思えない。

「嘘ではない。君だって本当は理解しているんだろう? 自分の身体がいかに素晴らしいものに変化しているのか」

「これから最後の仕上げにいくの。ドン・サウザンド様に一生を捧げる契約の儀式。ドン・サウザンド様の花嫁になるのよ。私たちと同じように、忠実な僕に。その『証』を身体に刻み込むの」

 くらりと目眩がしてナッシュは呻く。両隣でそんなナッシュを囲んでいるのは同じく勃起したペニスを見せつけ、刺激的な衣装に身を包んで豊かな胸を露わにしたふたりの淫魔。純白のドレスと彼女らの対比は異質であり、これから起こるだろうよからぬこと予感させる。

「歩けるかい?」

「ひぁんっ」

 後ろからドルベに抱きつかれ、胸を押しつけられながら囁かれる。改造乳房が大きく開かれた背の肌に直接当たり、気持ちよさが脊髄をダイレクトに駆け上がれば散々調教されたナッシュはすっかり腰を抜かしてしまった。履き慣れない細く高いヒールの靴が折れるように倒れるのを、ドルベが抱いて支えた。

「ふふ、かわいいナッシュ。大丈夫、私が連れていってあげるから」

 そうしてひょいとナッシュを横抱きにすると、ドルベは歩き出す。メラグも一緒にだ。相変わらず力の入らない身体でナッシュはおとなしく彼らに運ばれるしかなかった。移動の最中もドルベはいやらしくナッシュの身体をいじくっていく。

「あぅぅ、あ、あぁ……」

「ドルベ、どこ触ってるの。ソコはダメでしょう」

「おしりの方だよ。ナッシュのおしりの穴……ふふ、すっかりやわらかくなって。もうひくひくして濡れているよ。ああ、この君のかわいいおしりの中に私の精液をたっぷり出してあげたいよ、今すぐ……」

 つうとドルベの指がナッシュのアナルの入り口を撫でる。指の腹で押され、挿入するかしないかのギリギリのところを彷徨われてもどかしい。

「ひっ、んんっ、うぅ」

「ものほしそうに涎たらしちゃって。でもね、今からもおっときもちいいトコロに、きもちいいコトしてもらえるから、おしりは今日はガマンね」

「もっと……きもちいい、ところ……?」

「そう」

 メラグの赤い瞳が細められ、ナッシュの下腹部をうっとりと眺める。臍を改造していた触手が離れてからなめ回すように触れられた場所。その視線を送られるだけでじんわりと熱が広がってくような気さえした。

 性感を高められながらナッシュが連れて来られたのは、ドン・サウザンドの神殿の玉座の間だった。玉座へ続く階段の下には豪奢なベッドが一台置かれていた。生け贄を捧げる祭壇のようにも見えるそこにドルベはナッシュを仰向けに横たえる。

「ベクター様」

 階段の上の玉座に向かい跪いて、メラグとドルベは頭を下げる。仇にそんなことをする彼女らに、やめろ、と心の中でナッシュは悲鳴を上げた。

「儀式の準備が整いました」

「儀式ねぇ、めんどくせえ」

 ポケットに手を入れながら、かったるそうにベクターは階段を降りてくる。ベッドの傍らまで来ると言葉とは裏腹に、にやにやと実に楽しそうでいやらしい笑みを浮かべていた。ざまあみろとでもいいたげな目だ。

「俺はこいつが大嫌いだって言ってるだろ? そんなやつに儀式してやるほど俺は暇じゃねぇからなあ」

「そんな、ベクター様。ナッシュは必ずや貴方のお力になります」

「そうですわ。彼の力があればより多くの力を集めることが可能です」

「ふーん……じゃあドルベちゃんとメラグちゃんがー、そのカワイイお口で俺のしゃぶって立たせてくれるかな?」

 その言葉はベクターは彼女らの方を向かず、ナッシュに向けて言われていた。メラグもドルベもすっかり洗脳されている今、主人のペニスを舐めることは至上の褒美に違いない。現に彼女らはうれしそうに笑顔で腰を浮つかせてている。それでもナッシュは声を振り絞り叫ぶ。

「やめろっ!」

 玉座の間に響いた声にベクターがニヤリと唇をつりあげる。

「俺の命でもなんでもくれてやる……っ、だから、あいつらにそんなことをさせるな」

「お前にもう一度見せてやりたかったんだけどなぁ、大切なメラグちゃんとドルベちゃんが大嫌いな俺のチンポをうまそうにしゃぶってるところ」

 ナッシュが精一杯の凄みをきかせて睨むと、ベクターはひょいと飛び上がるようにベッドに乗り上がる。ナッシュの上に覆いかぶさると、がしりと胸の肉を掴みあげてきた。

「ぐぅっ!」

「かわいくねぇ悲鳴。メラグ、ドルベ、冗談だ。お前たちは下で仕事してこい。たぁっぷり人間どもとセックスしてくるんだぞ〜? その間にこっちはすませといてやる」

 ぎちちと胸を掴む手に込められた手は強く、明らからに痛めつける目的だ。ドルベとメラグからの優しい愛撫に慣れていたそこは、それほど脂肪がついているわけではないことも相まってナッシュに耐え難い苦痛をもたらす。

「はい、ベクター様っ」

「たっぷりセックスして濃厚精液子宮にため込んできますぅっ」

 指示通りにふたりはワープホールからどこかへ、おそらく人間界へと消えていく。……セックスをするために。

「庇った意味はあったのかな? ナッシュ? どこの誰とも知らない奴に犯されるより俺のチンポのほうが素性が知れてるぶんマシだろうに」

「貴様……っぐっ」

 ぎちち、と首輪のように巻き付いた触手が喉を締め上げてナッシュを苦しめる。手首をまとめた触手はドン・サウザンドの力だろうがぐいと両腕を持ち上げ、頭上に掲げられる格好をとらされる。ベッドに磁石のように貼り付いてびくともしない。早速ベクターはドレスの胸元を引き裂きナッシュの乳房を露わにさせた。膨らんだ胸は仰向けになればそれほど目立たなくなるとはいえ、男の胸とは明らかに違う。

「しっかし貧相な身体に改造されちまったなあナッシュぅ。こんなちっちゃい胸じゃ男の身体のままと変わんないんじゃねぇか? メラグやドルベの半分もねぇじゃねぇか」

「ぐあっ……あっああ」

 ぎちぎちと潰されそうなほどの強さでベクターは胸を揉みしだいていく。快楽混じりの苦痛は男の身体では決して味わえないものだ。ナッシュはただただ悲鳴を上げる。

「メラグもドルベも、本当はお前のこと見下したかったんじゃねぇのか? お前の身体を散々弄くったわりにはこんな貧相なのにして? ケツ穴にチンポつっこんでよがらせて! とてもじゃねぇが大切なお兄さまぁ〜とか我が友〜にすることじゃねぇだろ?」

「あいつらは……っ、そんなんじゃない!」

 大切なふたりのことを悪く言われれば、しかしナッシュは気力を奮い立たせ訴える。身体を変えられ、思考までもおかしくされてしまった二人を思い浮かべる。殺されるのとどちらがつらいだろうか。……比べられるわけがない。

「お前とは違う!」

「いいや、お前のことがキライだったんだよ、本当は」

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら見下すベクターの言葉をナッシュは信じない。

「あいつらは、俺の大切な仲間だっ……貴様らに、あんなふうにされた今だって、変わらないっ! おねだりすれば俺のおしりの中におチンポつっこんで精液中出ししてくれるし、おっぱいたくさん揉んで気持ちよくしてくれるっ」

 ベクターは一瞬だけ目を丸くし、そしてすぐにニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。まっすぐに青い瞳でベクターを見据えるナッシュは、自分が何を言ったか分かっていないのだろう。大まじめな顔でそんなことを言うナッシュはもう身体だけでなく頭のほうも着実に変えられていることに気づいてさえいない。

「……そうかそうか」

 くつくつと喉を鳴らしてベクターはナッシュから手を離す。己のズボンに手をかけ、性器を取り出そうとする。

「まあそんなことはどうでもいい。さっさと儀式をはじめようじゃねぇか」

「儀式……だと?」

「すぐに終わらせるから安心しろよ、俺だって大嫌いなお前とねっとりセックスする趣味はないからな」

 言いながら取り出されたベクターのペニスは彼の少年の身体には似つかわしくない凶悪な形をしていた。極太で毒々しい色をし、あちらこちらにグロテスクなイボさえついている。それはドルベやメラグを毎日貫いていた、ドン・サウザンドの触手の先端と同じ形をしていた。

「どうだぁ? ドン・サウザンドと一体化した俺のチンポはすげぇだろ?」

 ナッシュにペニスをつき出しながら軽く扱いて立たせていく。立ち込め始めた性の匂いに、びくんと身体に熱が蘇っていくのをナッシュは感じた。

「あっ……!? これっ……あぁ、あつい、おなかが、あついぃっ!」

 腹の皮膚の下で、完成したての臓器がどくどくと蠢いている。この器官はベクターのペニスを求めてやまないのだ。中に入れて欲しくてたまらない。そのにおいを嗅ぎ、見ただけで欲情してしまう。求めてしまうように造られている。圧倒的な欲望が、本能としてナッシュの身体には刻みつけられていたのだ。

「ナッシュぅ〜お前のできたておまんこ処女、俺が奪ってやるんだ。ありがたく思え!?」

 脚を大きく開かせると、先走りを垂らしたペニスの下にドン・サウザンドの紋章が濡れて光っている。ベクターがそれに手を触れる。爪を立てて引き剥がす。

「うぁあっ、ああんっ!」

 甘い声と共にどぷりと愛液を溢れさせながら、紋章はあっさりと剥がれていった。その下には肉の花弁が、男にはない器官がしっかり形成されている。ヴァギナ。女性の性器。改造された体内の、膣と子宮に繋がる入り口。くっぱりと開いたそこから、どろどろと蜜が滴り落ちてシーツを濡らす。破瓜の儀式の準備、つまりはドン・サウザンドのペニスを受け入れる準備はもう、ナッシュの肉体では完了している。

「さあ、しっかり身体で覚えろよ。これが今からお前が奉仕するご主人様の形だ。俺のこのチンポにぴったりな形にお前のナカは調教されんだよ!」

 ベクターが勃起したペニスをナッシュのできたてのピンク色の秘所にあてがう。すでに誘うように蠢いている濡れた肉に、ナッシュは悲鳴を上げる。

「いやだっ、やめろっ、こんなことっ……!」

「うるせぇんだよてめえはよ」

 前触れもなく適当に、ベクターのペニスはナッシュのそこに侵入を果たす。できたての、男を知らぬ少女のようだった入り口は暴力的な質量に裂け血を流す。

「っああああああぁぁぁぁぁ!!」

 高い悲鳴が玉座の間に響く。ナッシュの内側はきつく、締め付けるようにベクターのペニスを包み込み絡みついた。滴らせた血を潤滑油がわりに、まだ狭い内部をベクターのペニスが乱暴に押し広げながら進んでいく。

「あー……やっぱてめぇでも処女は最高だな! 処女膜破くのサイコー! キツキツでしめつけてくるぜ! どうだーナッシュちゃん? にくーい俺様、ベクター様にぃ、処女奪われちまった感想! 女にされた感想!」

「あぐっ、うぅっ……、あっ、あっ」

 アナルとはまた違う、内側を蹂躙される感覚にナッシュは短い息をしながら虚空に視線を彷徨わせる。男を受け入れるために存在する女のそこは意に反してベクターを飲み込み、奥へ奥へと導くように収縮を繰り返す。どん、と股間と股間がくっつくほど奥深く挿入されれば、膣より上の場所がきゅんと疼いた。子宮だ。精液を受け止め子を孕む場所。そこが求めている。ベクターを、ドン・サウザンドの精液を。

「あっ、ああんっ、ベクターのっおチンポっ……ごりごりっえぐられる……っ、痛いのに、痛いのにっなんだよこれっ気持ち……いい、気持ちいいっ、いやなのにっ、いやなのに、俺のできたておまんこっ、熱くて、どろどろ……っ気持ちいいよぉ……」

 ドルベの調教の成果かナッシュは感じたことを思うまま口に出していく。すっかりドレスは乱れ、熱でピンク色に色づいた肌がベッドの上で揺さぶられている様はベクターの征服欲を存分に満たし、興奮をかきたてた。あのナッシュが自分の下で抵抗もできず足掻いているのだ。快感を覚えないわけがなかった。

「っはぁ〜、いい顔してやがるぜ、ナッシュぅ。ほら、ご褒美の精液サービスしてやるよ、たっぷり受け取りなぁ!!」

 抜き差しを繰り返していたベクターのペニスが子宮の入り口につくほどに奥に押し込められる。内側で膨れ上がったそれの感触に、「来る」とナッシュが思った次の瞬間にはどぷどぷと音を立てて粘性の高い精液が放たれていた。

「んあぁあああああああっ!!」

 先ほどメラグとドルベの隣で味わった、ペニスとは違う場所でイく感覚。女性の性器でナッシュは達したのだ。びくんと少女の身体を跳ねさせて、憎い仇であるはずのベクターに貫かれながら。

 ベクターの精液は熱く、ナッシュの内側を蹂躙するように駆け抜け子宮へと注がれていく。押し寄せた精液の波が子宮をたっぷりと満たしていく。小さな精子が胎内を駆けまわっている様がナッシュには手に取るようにわかってしまった。

「あっ……ああっ、ベクタぁ……、きさまぁ……」

 力の入らない声で罵ってもベクターはペニスを挿入したままだ。射精が異常に長く続いている。

「だめぇ……せーえき、出しすぎぃ……おなか、パンパンになっちまう……」

「ああ? これくらいでヘバってんじゃねーぜ? こいつは俺との契約の証なんだ。……お前の身も心もこれで俺の性奴隷だ」

 ベクターの精液の流れがようやく止まると同時に、ヘソの下のあたり、ちょうど子宮があるだろう場所にじんわりと皮膚の下から熱が滲みだす。ベクターの精液が滲んだかのようなそれに、ナッシュが呻くと、そこに染みるように何かが浮き上がった。

 それはドン・サウザンドの紋章だった。魔力を帯びたそれが刺青のようにナッシュの下腹部に刻まれたのだ。所有の刻印だとばかりに。

「ああっ……!」

 ドルベとメラグの同じ場所にもあったそれに、ナッシュは目を見開く。同時に首の触手が形を変えていく。黒い皮でできたようにぬらりと光る首輪と化す。腹に刻まれた紋章と同じペンダントヘッドが形成される。同時に純白だったドレスも、穢された証のようにみるみるうちに色を変えていく。漆黒に染まり上がったドレスは堕ちてしまったことの象徴のようだ。それを見届けて、ベクターはずるりとナッシュの内側からペニスを抜いた。

「あんっ!」

「クククッ、これでお前も一人前の淫魔になれるぜ。おめでとうございます、ナッシュちゃん! しっかり俺のチンポの形を覚えるまで調教したら、いよいよ完成だ!」

「なっ……!」

 ベクターに反論しようと口を開きかけたとき、下半身がすーすーとしてナッシュは首を上げた。ベクターにペニスを抜かれたそこは、蜜こそ洪水のように溢れているものの、精液は出ることなく、ただしベクターが入った形のまま開ききっている。内側に放たれた精液が固まって、張り型のようにナッシュの膣内のかたちをかえているのだ。ベクターのペニスの形を覚えさせるように。その形にぴったりの穴になるように。

 射出された精液はそのまま色を黒に変え、精子がひとつひとつ変化したような微細な黒い触手に変化する。ナッシュの膣内に密集し押し広げ、形をドン・サウザンドのペニスが最も快楽を得られる形へと変質させていく。

「あっ、んあぁ、やめっ………おれのなか、おかしくなるっ、変えられる、やだ、助けなきゃいけないのに、メラグと、ドルベをぉっ、あぐぅ、そんなに、這いずりまわるなぁっ!」

 拒絶を訴えても触手が理解するわけがなかった。

「さて最後だ、ナッシュ。お前の頭もいじらせてもらうぜ」

 もうすでにベッドから降りていたベクターがパチンと指を鳴らすとベッドから一斉に触手が伸びてナッシュに群がった。横たえられていたのは全てが触手でできたベッドだったのだ。

「やめろっやだっ、ベクターっ! 貴様、絶対に、俺がっ……! んごっ」

 殺してやる。そう言いかけた口には触手が侵入し塞がれる。

「ん、んぅ……がっ……」

 喉の奥まで侵入し、同時に口腔内を無数の触手が這い回り、針で突き刺し、改造していく。キスやフェラチオの際にとびきりの快楽を相手に与えられるように。更に耳の穴からしゅるしゅると細い触手が這い回って内側に、脳髄までにも侵入し思考を書き換えていく。ドン・サウザンドに永遠の忠誠を捧げるように。あらゆる性技の知識を脳に直接刻みこむ。触手はナッシュの手と脚を完全に飲み込み、しゅるしゅると目にまで巻き付いた。視界を覆うアイマスクのように群がった無数の触手は他の部位と同じように眼窩内にまで入り込み、目までも改造するのだ。目に映るモノ全てが性的興奮を呼び起こすように。触手に飲み込まれていくナッシュにベクターは踵を返す。

「じゃ、次会う時が楽しみだよ、ナッシュ」

 ナッシュの寝かされていたベッドは繭のような形になりナッシュを完全に呑み込んだ。新たな淫魔を孕んでどくん、どくんと怪しく脈打つのだ。

 

 

 

 ベクターはドン・サウザンドの神殿の玉座の間にドルベとメラグを呼びつけた。いつもさせている奉仕が目的ではない。階段の下でうごめく繭からついに新しい淫魔が、ドン・サウザンドの忠実なしもべが生まれるのだ。

 この場に彼らを呼びつけたのはベクターなりのサービスだった。

「さあ、新しい淫魔が生まれるぜ。お前たちが待ちわびてた、ナッシュがな」

 どくん、どくんと脈打つ触手で出来た黒い繭。むせかえるような精のにおいを出しながら、ぐぱぁとまるで女性器が開くように触手がほどけていく。

「ナッシュ」

 そこに入っていた兄の名を、感極まったようにメラグが呼ぶ。

 白い身体に、乳房をさらけだした、スカートのようなレースのついたコルセットはメラグやドルベの身に付けるものと同じデザインだ。だがその色は漆黒。首輪と同じぬめる皮でできたボンテージ。さらけ出された股間にはペニスとヴァギナ、ふたつの性器を備えている。淫魔として、もとの姿よりも大分性器や胸を成長させられたメラグたちと違い、ナッシュの体つきは女性寄りになったとはいえ、胸も小さく、ペニスも歳相応であった。しかしそれが肉体の年齢相応の中性的な色気さえ感じさせる。ハリとツヤのよくなった肌は触手の粘液でいやらしく濡れて妖艶に光っている。

 腹部に刻まれた、ドン・サウザンドの紋章がじんわりと燐光を放つと、項垂れていたナッシュの背中、肩甲骨の肌がぐいと盛り上がる。そこから引き裂くように悪魔を模した羽が広がった。

「あはっ!」

 そこでようやくナッシュは声を上げた。快感を隠さない声はまるで産声であった。どぴゅ、と同時に勃起したままだったペニスから精液が放たれ床に滴る。開かれた眼は、人間の姿の青色ではなく、彼のバリアンとしての姿と同じように、サファイアとルビーのオッドアイに変化していた。快楽の色の滲んだその瞳がうっとりと空を向くと、その後は両手で抱えた己の身体を確かめる。

「これが、俺……」

 言葉を紡ぐ唇もピンク色でいやらしく濡れている。

「……気分はどうだぁ? ナッシュ」

 玉座に腰を下ろしながらベクターが問いかける。するとナッシュは躊躇いなく彼に跪き、頭を垂れた。

「はい……ベクター様。すごく、いい気分です。こんな素晴らしい身体にしてくださってありがとうございます……すごい……身体中熱くて、エッチしたくて仕方ないです」

 生まれたての淫魔は心の底からの感謝を主に伝える。

「ありがとうございます、ベクター様。これからは貴方とドン・サウザンド様の忠実な僕として、この胎に濃厚精液たっぷり貯めこんで捧げます」

「ま、せいぜいがんばれよ?」

 実にいい気分だとばかりにベクターは笑った。ナッシュに己を失わせ、下僕として忠誠を誓わせることはセックス以上の快感だった。

「ナッシュ!」

「おめでとうナッシュ、これであなたも私達の仲間ね」

 駆け寄ってくるドルベとメラグに、ナッシュはにっこりと微笑んだ。

「ドルベ、メラグ、今まで苦労をかけた。これで俺も……お前たちを助けることができるんだ。一緒に、ドン・サウザンド様のためにたっぷりカオスを捧げられる」

 蜜の滴る秘所をさらけ出しながら、ナッシュは誘うように唇を舐めた。

「ふたりとも、俺のココで気持よくさせてあげたい……俺のできたての処女おまんこ。今までたくさん気持よくさせてくれたお礼に、ふたりに味わってもらいたいんだ……」

 ナッシュの言葉にベクターは違和感を覚えた。彼は処女と言ったが、それはもう儀式の際にベクターが処女膜を乱暴に破り喪失させたはずだった。

「本当に? ああ、ナッシュ、かわいい淫魔に生まれ変わった君のおまんこ、味わいたくて仕方ないよ……私のおチンポも、君を見ているだけでこんなにガチガチだ」

「あはっ、ドルベのおチンポ、ほんとにすごぉい。いいぜ? 早く俺の中に入れて……?」

「ちょっとドルベ、抜け駆けはずるいわよ。私だってナッシュのできたておまんこの中にはやく入れたくて、クリチンポ張り詰めて痛くてしょうがないんだからぁ」

「君には君が調教したアナルがあるだろう? ナッシュ、メラグにもいれさせてやってくれないか?」

 ドルベに向かい合いながら、ナッシュはその背後のメラグを振り返り、尻を突き出すようにアナルの入り口を指で押し広げた。ピンク色に窄まったそこも、もちろん淫魔として極上の快楽を相手に与えられるよう造り変えられている。

「もちろんだ。メラグ、俺のおしりのなかにたっぷり改造精液出してぇ。俺のおしり、メラグの精液大好きだから」

 そうして始まった三人のまぐあいを、ベクターはにやつきながら玉座で見下ろす。

 ドルベの上にナッシュがまたがり、勃起したペニスを蜜の溢れる秘所に押し込んでいく。その後ろでは抱えるようにメラグが肥大化したクリトリスの変化したペニスを尻に挿入している。

「あんっ、あはっ、メラグっ、おしり気持ちいい!」

「うん、あなたのナカってほんと最高ね、ナッシュ、わたしのクリチンポもビンビンだよぉ! でも、おまんこも、やわらかくて気持ちよさそう……」

「ふふ、そちらは私が味わってからだな。じゃあ、生まれ変わったナッシュのナカ、入るよ」

「ひゃあんっ!」

 ドルベの挿入と同時、短い悲鳴と共にぶつりと裂ける音がして、ナッシュの膣の入り口からじんわりと血がにじむ。窮屈な入り口にキツキツの締め付けはまるで処女のようで、ドルベを驚かせた。淫魔は忠誠の証として全員処女をベクターに、ドン・サウザンドに奪われるからだ。

「あはっ、どう、ドルベっ、俺の処女おまんこっ」

「ああっ、きつくて、ひだひだでイボイボで、私のおチンポ擦れて気持ちいいっ……だが、これは、まるで処女みたいだっ」

 ドルベの言葉にナッシュは悪戯っぽく笑った。彼の色気、もしくは魅力は成長途中の少女のそれに違いなかった。

「ふふ……まるでじゃないぞ、ドルベ。俺のおまんこっ、処女膜は破られても何度でも蘇る。これが俺に、ドン・サウザンド様が与えてくれた力っ、いつでも処女おまんこで、快楽たーっぷりしぼりとって、子宮にためこんだカオス、処女膜で塞いで絶対逃がさないんだ」

 愛しそうに、ドルベとメラグの二穴挿入で膨らんだ腹部の、ドン・サウザンドの紋章が刻まれた箇所を撫でながらナッシュは語る。彼がドン・サウザンドから与えられた能力はまるでナッシュのエースモンスター、CNo.101の何度でも蘇りその身に相手をとらえて離さない効果のようだった。

「すごいわナッシュ……私もナッシュの処女奪えるのねっ」

 ずん、とアナルを突き上げながら、メラグは興奮に思わず射精をする。そんなメラグの唇に、なだめるようなキスをしながら、ナッシュは左右で違う色の瞳で妖しくも優しく微笑んだ。

「ふふっ、いつでも、何度でも、メラグのおっきいクリチンポで俺の処女奪っていいんだぞ。俺はお前たちのためならなんでもする……お前たちを助けるために、淫魔になったんだから。一緒に、ドン・サウザンド様のために奉仕する助けになりたいんだ」

 そうして三人の淫魔たちの乱交はベクターが見ている前で長く続いた。目的を歪められ、守るべきだった大切なものに腰を振るナッシュの姿に、ベクターは勝利を確信し満足した。

「さて……これで残るはあと一人か」

 乱交する三人を置いてベクターは立ち上がる。未だ堕ちぬ、最後の七皇のいる場所へ向かうために。

2014.01.27

ナッシュの固有ハレンチ能力がマニアックすぎないかと私の中で話題ですが、こういうギャグみたいなこじつけするならやっぱり「何度でも蘇る!」かな!と!(笑)次回あれば恥辱の騎士ミザエル編。

Text by hitotonoya.2014
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