おかしいとは思っていた。九十九遊馬とはじめて決闘をしたときから。
九十九遊馬は複数のナンバーズを所持していた。つまり彼は他人からナンバーズを奪ったことがあるということだ。
それには当然、このフォトンハンドに似た力を以って、魂ごと相手のナンバーズを狩るしか方法はない。
だというのに九十九遊馬からは全く罪悪感が感じられず、ただ無邪気で純粋な決闘への熱意しか伝わってこなかったのだ。その疑問はこうして今、ナンバーズのオリジナルであるアストラルの記憶を垣間見たことにより天城カイトの中でよりその形を確かなものにする。
九十九遊馬が出会った一番目のナンバーズ、No.17 リバイス・ドラゴンはよりによってあの青髪の男が所持していたものだったのだ。青髪の男――確か決闘盤の登録名は「SHARK」であった――はカイトと決闘をしたときにナンバーズを持っているといったが、その魂の中にはナンバーズが存在していなかったのだ。
遊馬はカイトとの決闘でリバイス・ドラゴンを使用している。そしてその後に、カイトはきちんと魂の入ったシャークと決闘している。――つまり遊馬とアストラルは魂を抜き取らず、ナンバーズだけを掌握する術を持っているということだ。そして魂とナンバーズは分離することが可能だということ。
今まで何人の魂をこの手で抜き取り握りつぶしナンバーズに変えてきたか、カイトは思い出すのもイヤになる。もし、遊馬のようにナンバーズを手にする方法があるのなら。そちらの手段をとったほうがいいのではないか。しかしMr.ハートランドもDr.フェイカーもそのような手段があるとはカイトに一切教えてくれない。ナンバーズは魂と一体化しているのだから仕方ないのだと、ハルトのためになら魂を抜き取ることは仕方のないことなのだと、言い聞かせて今までハンティングを続けてきた。ナンバーズは悪人にとりつくものなのだと。悪人の魂とハルトの病気を治すこと、天秤にかければすぐに後者がごつんと音をたてて地面につくに決まっているのだ。
だが、ここにきて生じた僅かな迷いはなんだ。
九十九遊馬とアストラルの存在。そしてはじめてぬきとった、ナンバーズを持たぬ魂。かつて手中に収めそして手放した、あのシャークという男の魂の感触を思い出すように手を少し握ってみる。人肌のようにかすかにあたたかいあの魂を、奪うことが正しいなど到底思えはしなかった。
だがカイトは首を振る。今更戻れるはずはないのだ。ハルトを救うにはあの二人に従うしか、魂ごとナンバーズを狩り続けるしかないのだ。シャークの魂をぬきとってしまったのは自分とオービタルのただのミスで、ほら、手を放せば魂は勝手に持ち主の元へ帰っていったではないか。自分の手はまだ汚れていない。今度ミスをしなければいい。否、汚れていてもかまわない。ハルトのためならば、しかし、あの優しいハルトは元に戻ったとき自分を許してくれるのだろうか。大丈夫だ。大丈夫。言い聞かせる。俺はナンバーズハンターを続けるしかないのだと。それしか選ぶ道はないのだと。
「行くぞ、オービタル」
「カシコマリッ!」
飛行形態をとったオービタル7を纏い、カイトは大空を翔る。次の獲物を狙う鷹のように。
カイト様のキャラを掴むために書いた文です。微妙に溢れるシャークさん贔屓臭すみません。
Text by hitotonoya.2011